スタンドアローン型
VRヘッドセットの決定版「Oculus GO」の
レビューを行ったのがちょうど一年ほど前。「Oculus GO」は性能を考えると、驚くほど低価格で、誰にでも手軽で高品質な
VRを体験をもたらし、
VR機器の浸透に一役買ってくれた名機でした。私は今でもゲームをしたり、自分の撮影した
360度動画の確認用に愛用しております。
そして、ついに上位機となる「Oculus Quest」が発売されました。
しばらく前から国内
AmazonでもOculus製品の取り扱いが開始されているので、そちらで注文しようと思ったのですが、「Oculus Quest」に関しては予約が殺到して、あっという間に正規品が購入できなくなってしまったので、今回も公式サイトで注文する事にしました。
(2019年6月に入ってからは在庫が回復していますが、たまに売り切れてますね・・・大人気です)
価格は64GBモデルが49,800円、128GBモデルが62,800円と「Oculus GO」に比べると倍以上と高価になっておりますが、それに見合うくらいの素晴らしい
VR体験が可能な機器となっております。
「Oculus Quest」について、一言で「Oculus GO」との違いを説明するなら「空間を自由に動けるようになった」ことですね。
本体内に高性能
スマートフォン並のプロセッサが内蔵されており、PCVRや
PSVRのようなケーブルが不要で、単体で動作する
スタンドアローン型
VRヘットセットという点は同じですが、ポジショント
ラッキングが「3DoF」から「6DoF」に進化しています。
「Oculus GO」の「3DoF」は3軸自由度と言って、顔の向き(頭部のXYZ軸それぞれの傾き)を把握して、見ている方向を画面に反映させていましたが、「Oculus Quest」の「6DoF」はそれに加えて、XYZ軸それぞれの移動量をト
ラッキングできるので、空間内を移動できるというのが最大の特徴です。
ケーブルで繋ぐタイプのPCVRや
PSVRでは、センサーを部屋に配置する事によって「6DoF」を可能にしていましたが、
スタンドアローン型の「Oculus Quest」では、
インサイドアウト方式という4つのカメラで空間を認識する事によってそれを実現しています。
「3DoF」と「6DoF」では没入感に大きな差があります。
「3DoF」の「Oculus GO」は、辺りを見回すことはできても、座ったり、自分が動いても、バーチャル空間は頭部に固定されていましたが、「6DoF」の「Oculus Quest」では、自分がしゃがんだり、歩いたりすると、あたかも自分がバーチャル空間内にいるかのように移動できます。
しかも、この「6DoF」とケーブルレスの
スタンドアローン型との愛称は抜群です!
PCVRや
PSVRではどうやってもケーブルの長さまでしか移動できず(さらに邪魔)、センサーを設置できる場所が限られますので、移動できる空間に制限があります。
ところが、
スタンドアローン型の「Oculus Quest」ならば、屋外や体育館のように広い場所があれば(ガーディアンでルームスケールを設定できる限界以内なら)どこまでも歩いて(上空も)移動できるのです。PCVRや
PSVRで「6DoF」を体験済みの方でも、これは感動しますよ。
加えて「
Oculus Rift」譲りのコントローラーでの操作感も素晴らしいです。
一般的に普及している
PSVRの
PS Moveよりも、物を掴んだり、指で押したり、投げたりといった一連の操作が直感的に操作できるので、バーチャル空間への没入感もさらに高まります。
「Oculus Quest」で使われている技術は、どれも既存にあったものだけど、これらの全ての要素がバランスよくマッチし、最高の
VR体験を作り上げています。
▼こちらは国内
Amazonの正規品です。定価以上になっている物を間違って買わないように気を付けて下さい。
この記事を書いている6月初頭では普通に購入できるようになっています。
▼
VR機器は、本体の大きさや、形状の特殊なコントローラーの問題で、意外と収納に困ります。
「Oculus GO」は100均で売っているプラスチックケースにピッタリ入りましたが、「Oculus Quest」は頭部を覆う部品の材質が固いものに変更になり、かなり大きめのケースじゃないと入りませんので、専用ケースがあると助かります。
さっそく開封レポート
箱はかなりデカイです。
「Oculus GO」の倍くらいはありそう。
頭部を固定する部分が、「Oculus GO」の布バンドからちょっと固めのゴムのような材質に変更されています。この部分、かなりフィット感は良いですが、バンドみたいに曲げられないので、場所を取ってしまいます。ケースも大きめの物が必要になります。
こちらは正面。SFに出て来そうな未来感あふれるデザイン(複眼カメラのセイかな?)
カッコいいですね。ロゴの上にはインジケータがあります。
四隅に
インサイドアウト方式を実現するためのカメラがあるのが分かります。
こちらはひっくり返して下部を見た所。
音量ボタンと、IPD(目と目の幅)調整用のバーがあります。
「Oculus Quest」は片目ごとに別の
有機ELが使われているので、この調整が可能です。
このおかげでよりクッキリと鮮明な映像を見ることが可能です。
「Oculus GO」の時と同じで、鼻の低い平たい顔族の私の場合は、この鼻の隙間から外が見えてしまいますね・・・
ちなみに、解像度は片目1600×1440
ピクセルなので、2560×1440
ピクセルの液晶が一枚入っていた「Oculus GO」と比べるなら、3200×1440
ピクセルという換算(25%向上)。だいぶ高解像度になっています。
実際に見比べると、かなりクッキリしていますが、ペンタイル方式の
有機ELなので、網目がちょっと気になります。それでも高解像度なので、RGB配列ながらも解像度の低かった
PSVRの
有機ELとは別次元です。
こちらは本体上部。ファブリック素材が使われていて、なかなか高級感があります。
正面向かって右側には、充電用のUSB Type-Cポートと、オーディオジャックがあります。
正面向かって左側にも、オーディオジャックと電源ボタン。
「Oculus Quest インイヤーヘッドホン」が左右で2つに分かれているので、このような仕様になっていると思われます。
カメラ部分はぶつからないように?くぼみになっています。
電源ボタンにもインジケータがあって、充電やバッテリー不足時に光ります。
レンズには保護シートが貼られていました。
日光を当てないように注意。
VRヘットセットにはやはりケースが必須だと思います。
いつもなら100均のケース(100円では買えないヤツ)に入れるのですが「Oculus Quest」の大きさでは入る物が無かったのと、コントローラーの収納も考えて、今回は専用のケースを購入予定。
スタンドアローン型の「Oculus GO」「Oculus Quest」「Gear
VR」を並べてみました。
「Oculus Quest」を購入したので「Oculus GO」は不要になるかと思っていたのですが、両機種には互換性がないとの事なので(次回の記事で互換性を調べてみます)今までの資産を無駄にしないためにも「Oculus GO」は手放せません。
また「3DoF」の「Oculus GO」は「GoPro Fusion」で撮影した360度映像を見るのに最適。
デザイン的な影響か「Oculus Quest」の方がコンパクトに見えます。
こちらが「Oculus Quest」のコントローラー。とても握りやすいです。
「
Oculus Rift」のものと、輪っかの向きが逆になってますね。センサー等の関係?
単三電池1本で動く仕様が嬉しい所。
「Oculus GO」の時は結構バッテリー消費が激しかったので、大容量の充電式電池が望ましいかと思われます。
「Oculus GO」のコントローラーはレーザー
ポインターみたいな操作感でしたが、「Oculus Quest」のコントローラーはかなり「手」に近い操作感です。これ以上を望むなら、グローブ型しかないでしょう。
こちらはアクセサリ類が入った箱。
眼鏡用のスペーサーとか、USBケーブルが入っています。
ケーブルは
スマートフォン用のもので十分ですが、付属の物は結構長いので、給電しながらでも遊べそう(ケーブルレスの意味が無いし、バッテリーに悪影響なので、やめた方が良いですが・・・)
バンドの調整は、今回もマジックテープで行います。
PSVRみたいな大掛かりな機構よりもシンプルで良いですが、ちょっとショボい。
三次元音響を実現するスピーカーはこの位置にあります。
初期設定を行います
「Oculus GO」もそうでしたが、初期設定には別途
スマートフォンと専用アプリが必要になります。
後述しますが、このアプリはディスプレイ
ミラーリングにも使えるので、
タブレット等にも入れておいた方が便利です。
アニメーションで説明してくれる凝った初期設定です。
電源の入れ方や、操作に関しても説明してくれます。
最近の機器は説明書要らず。
ペアリングを行ったら。
WiFiに接続してアップデートが始まりました。
コントローラーへの電池の入れ方から説明してくれます。
フタの取り出し方法が分かりにくいですからね。
コントローラーのペアリングも完了です。
ここで、アニメーションによる注意点の説明。
これで、初期設定は終わりです。
アップデートしている間に、ストアでも見てゲームを物色しましょう。
ヘッドセットの調整の仕方も図説してくれます。
「Oculus Quest」のフィット感はかなり高いです。
ぼやけていたり、見えにくい時はIPDを調整しましょう。
以降は
スマートフォンいらずで使えるのですが、
ゲームパッドのペアリングは単体では出来ないみたいなので、ついでにやっておきましょう。
ゲームパッド必須のアプリも結構ありますし、便利な使い方も可能です。
スクリーンショットは「Oculus GO」のものですが「Oculus Quest」でもほぼ一緒です。
やり方は簡単で、設定のコントローラーから「新しいコントローラーをペアリング」を選択して「
ゲームパッドをペアリング」を選ぶだけ。
ちなみに
ゲームパッドと専用コントローラーは排他利用になるので、どちらかがアクティブな時はもう一方が使えません。
ゲームパッドをメインで使う場合は、視線(厳密には頭の角度)で
ポインターを操作して、
ゲームパッドのボタンで決定などの操作が可能です。
何かと便利な開発者モードにしておく
ADB接続して、自作のアプリをインストールしたり、後述する方法で一般的な
Androidアプリをインストールするために、開発者モードをオンにしておくと便利です。
こちらも
スマートフォンから行います。「設定」から「開発者モード」のボタンをオンにすると…
ブラウザが立ち上がって登録を促されます。
1.Go toのところにあるURLをタップすると…
団体名を入力するように求められるので、適当に入れて送信して下さい。
これで開発者モードがオンになりました。
以降はADB接続が可能になります。こちらは普段使っている
Androidの開発環境のものでOKでした。
うまく接続できない場合は、
こちらから「Oculus Go ADB Drivers」をダウンロードしてインストールしてみて下さい。
ちなみにADB接続が成功した場合は、ヘッドセットの画面に「このPCからの接続を許可しますか?」みたいなダイアログが表示されているので、許可してあげて下さい。
以降はライブラリ内の提供元不明の項目にインストールしたアプリが表示されるようになります。
注意点として、開発者モードがオンだと
WindowsでUSBファイル転送が上手くいかなくなります。
実際に使ってみましょう
ここからの
スクリーンショットは実機のシェア機能で撮影されたものになります。
「Oculus Quest」のファーストインプレッションとしては、まず画質の美しさに驚かされます。
「Oculus GO」を初めて使った時も、当時メインで使っていた
PSVRより奇麗で感動したものですが、「Oculus Quest」の映像を見てから「Oculus GO」を被ると、若干ボケた感じがします。
2560×1440
ピクセルと3200×1440
ピクセルの違いですから、解像度比で1.4倍(25%)の向上は伊達じゃないですね。
しかも、液晶から
有機ELへの変更なので、色の鮮やかさや黒の締まり具合も抜群です。残念ながら
VR酔いにも影響のあるリフレッシュレート(画面の書き換え)は「Oculus GO」と同じ72Hzのままなのですが、PCVRと比べなければ72Hzでも気になることは無いでしょう。
「画質」は最高峰なのですが、
PSVRやPCVRと比べて気になるのが3Dの描画能力。
「Oculus GO」でも当時のハイエンド
スマートフォン(Galaxy S7)並みの性能とは言え、さすがに
PS4やPCに比べるとだいぶ落ちてしまいました。
「Oculus Quest」はSnapdragon 835搭載で
Galaxy S8クラスの性能なので、1.4倍くらいのスペックアップは見込まれます(AnTuTuのスコアはS7が16万点で、S8が20万点でした。プロセッサの性能が25%ほどアップしていますが、解像度も25%アップなので、どの程度相殺されるのかは不明ですが・・・)
スターウォーズのゲームやデモアプリの「Oculus First Contact」を見る限りでは、作り方によっては
PSVR並みに美しい映像を生み出しています(
PSVRは解像度がネックなので、いくらグラフィックが奇麗でも汚く見えます・・・)ので、期待出来ます。
ちなみに「Oculus Quest」には
チュートリアルアプリの他に、市販ゲームのデモ版がいくつかインストールされています。
この
チュートリアルが非常に優秀で「Oculus Quest」で出来る事が一通り体験できます。
ガーディアンについての解説や、専用コントローラーによる掴む、殴る、投げるなどの操作、ト
ラッキングされた空間での動きを学習できます。
他にも
NASに入れた動画を見たり、
VRにも対応した
WEBブラウザ(
Chrome準拠)も標準で搭載されています。自分で撮影した360度動画の閲覧も
NAS経由で行うことが可能です。
こちらは一般の
Androidアプリを実行できる「Oculus TV」。
前述の開発者モードをオンにしていれば、ADBからAPKファイルをインストール可能です。
さらに「ESファイル
エクスプローラー」等から、
Androidの設定アプリを起動できるので、フォントサイズやDPIを変更することも可能です。
こちらは
NASだけでなく、PCに入っている(
Youtubeからダウンロードした)
VR動画も再生可能な「SKYBOX」。
VR動画を閲覧する方は必須のアプリだと思います。
自分の「GoPro Fusion」で撮影した滝の動画を再生してみました。
5K(5120x2560
ピクセル)の動画ですが、かなりクッキリとした映像で滑らかに見ることができます。
WEBブラウザからWEBベースの
VRゲームを実行する事も可能です。
ネイティブアプリケーション並みによく動きますよ!
現段階ではゲーム不足なきらいもある「Oculus Quest」では非常に助かります。
前半レビューまとめ
待ちに待った「Oculus Quest」は期待を裏切らない完成度と、現時点で最高の
VR体験ができる機器でした。デ
バイス的な不満はありませんが、唯一の不満として「Oculus GO」のアプリ資産が生かせない点が挙げられます。
Oculusの施策としては、パブリッシャー次第でPCVRの「
Oculus Rift」用に購入したアプリの同製品がダウンロードできる事を謳っていますが、元々高性能なPCVRの「
Oculus Rift」用に作られたゲームを、
スマートフォン並みの性能の「Oculus Quest」用に調整するのは難しいと思われ、あまり数は多くありません。
実際には「
Oculus Rift」より、「Oculus GO」の方がスペックは近いので、こちらと下位互換性を持たせたほうが良かったと思うのですが・・・。次の後半のレビューでは、「Oculus Quest」専用ゲームの感想と、「Oculus GO」用に購入したアプリを無理やりインストールしてレポートしたいと思います。
▼こちらは国内
Amazonの正規品です。定価以上になっている物を間違って買わないように気を付けて下さい。
この記事を書いている6月初頭では普通に購入できるようになっています。
▼
VR機器は、本体の大きさや、形状の特殊なコントローラーの問題で、意外と収納に困ります。